この記事では、漫画「ゴールデンカムイ」を例にして、プロジェクトマネジメントの概念をご紹介します。
私の好きな漫画に「ゴールデンカムイ」という作品があります。2014年に週刊ヤングジャンプで連載が始まり、2018年末時点で連載中の作品です。ジャンルは宝探しを目的とした冒険活劇という結構ありふれた筋書きなんだけど、明治時代の北海道というワクワクする舞台設定と延々アイヌの食文化について脱線するという不思議な展開で、唯一無二の作品となっています。
ここまで書いて、そもそもこの漫画を知らない人には一切伝わらない記事と気づいたので、ゴールデンカムイの紹介はここまでにしましょう。この記事は、ゴールデンカムイのファンで、PMBOKの勉強をしているけれど、どうもプロジェクトマネジメントの用語がピンとこない…そんな方にむけて、抽象的なところの多いプロジェクトマネジメント・PMBOKの用語を少しでも身近に感じてもらうために書きました。
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ゴールデンカムイとはどんなプロジェクトなのか?
ゴールデンカムイの主人公は不死身の杉元こと杉元佐一です。展開上、彼をプロジェクトマネージャーと置きましょう。物語の中心は、杉本が、幼馴染の梅子の眼の手術費を手に入れるべく、アイヌの埋蔵金を探しだす、というものです。(もはや脱線しすぎてこの筋を覚えている人はどれだけいることやら…)
ゴールデンカムイのプロジェクトの目標
だいぶ苦しいけど「梅子の眼の手術費用として、アイヌの埋蔵金を見つける」ことですね。
ゴールデンカムイのステークホルダー
さて、プロジェクトの関係者を洗い出していきましょう。さながら登場人物紹介になってきますね。
第1巻の時点に限定すると、こんな関係者が出てきます。
- 父の仇を追うアシリパさん(正しくは、「リ」は小さな「リ」だけど無視します)
- 刺青人皮を追う刺客(尾形上等兵、鶴見中尉)
- 脱獄王白石
- 新撰組土方歳三
アシリパさんは協力関係、白石は利害対立しつつも後に仲間に、あとは完全に敵対するステークホルダーですね。関係者というよりは敵。とはいえプロジェクト進行には欠かせない登場人物ばかりなので「敵対」というラベル付きでステークホルダー登録簿に書いとかないといけません。
物語が進んでいくとこんな風に増えるので、定期的にステークホルダー登録簿は書き換えが必要です。(第14巻あたり)
杉元が旅をする仲間
- アシリパさん
- マタギの谷垣
- 脱獄王白石
- インカラマッ(敵?)
- キロランケ(敵?)
利害一致のため一旦協力
- 土方
- 永倉新八
- 牛山
- 尾形上等兵
- 家永カノ(女装医者)
第七師団
- 鶴見中尉
- 月島軍曹
- 鯉戸少尉
- 二階堂
- 宇佐美(ホクロの刺青)
最新版のWikipediaの「登場人物」セクションがステークホルダー登録簿に相当しますね。
ゴールデンカムイのスコープ・スケジュール・コスト
プロジェクトを推進する上では、スコープが大事になってきます。本来の目的は「梅子の手術費用を捻出すること」でした。物語の中盤で杉元はその目的を果たすために十分な金銭を提示されたのに、断ります。当初のスコープがズレてきている証拠ですね。15巻あたりからは「アシリパさんを探す」というサブプロジェクトに派生しています。
スケジュールは梅子の眼が手術で治るくらいまでには、というフワっとしたものですね。なので曖昧です。
コスト面の制約はこの漫画、少ないですね。限られた資金で金塊を探す、と思いきや、道すがら野生動物を捕獲して食べたり、売って路銀を稼いだりしていて、むしろそれが漫画のメインみたいになってますね。
というわけで、連載中の週刊誌連載作品としては、プロジェクトのスコープ・スケジュール・コストがほぼ存在しないに等しいですね。同様に、品質・調達なんかも登場しないですね。
ゴールデンカムイのリスク
プロジェクトにはリスクがつきものです。ゴールデンカムイは、ヒグマやら北鎮舞台やら殺人鬼やら、物騒なキャラが続々登場します。そのため、最大のリスクは「最悪命を落とす」ことです。リスクには回避・軽減・転嫁・受容という4つの対策が存在します。しかし、不死身の杉元はこの究極の「命を落とすかもしれない」というリスクに対して、真正面から立ち向かっていきます。なので、ほぼ「受容」しちゃってますね。おそるべし杉元。
(もっとも、局所局所では死なないような作戦を練ったり、顔を切られてでも相手を殺して助かろうとしたりするので、「軽減」「回避」の行動もとってます)
ゴールデンカムイのコミュニケーションマネジメント
これは結構興味深いことに、ゴールデンカムイは舞台が明治時代の日本(北海道)ということもあり、コミュニケーションが現代社会と比べるとかなり脆弱です。情報収拾は基本的に村へ行って人に聞き込み、ニュースを伝えるのは直接会って伝えることがほとんどです。ごく稀に出てくる情報伝達手段は電報くらいなもの。写真を使って「この人を見たか?」とやるのも当時としては最先端の方法だったと言えるでしょう。
ゴールデンカムイはプロジェクトとしてお粗末?
一言で言うと、ゴールデンカムイはプロジェクトとしてはかなりうまくいってない感じです。
プロジェクトの目標に対して、行動がブレブレです。アシリパさんに情が移った杉元が、梅子のことを忘れてアシリパの父ウィルクの謎を追ったり、はぐれたアシリパさんを捜索したり、喧嘩したりしちゃってます。そろそろプロジェクトの目標を「ウィルクの真の目的を探る」とかに変更しないといけなさそうです。
とはいえ、人気が盛り上がってくるとメインストーリーが脱線しまくるのは連載漫画のさだめといえましょう。
ゴールデンカムイのプロジェクトがうまく行こうといくまいと、漫画「ゴールデンカムイ」が面白ければ、読者としてはそれで全てOKですね。
というわけで、すごくざっくりと漫画「ゴールデンカムイ」を例にして、PMBOKに出てくるプロジェクトマネジメント用語をご紹介してみました。